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なんの奇跡か連続でペペウル好きのお方からコメいただくことができたので、ペペウルパラレルSSを再UPします。

コメント欄をどうぞ~。
あ、あと昨日のコメ返信はやっぱり昨日のコメ欄にさせていただきました^^
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ガーディアン・サーガ
☆姫と泣き虫☆

二人の出逢いは必然だった。
「ちょっと、そこのあんた! なにして……泣いてるの?」
夕暮れの誰も居ない演習場の片隅で背を向け丸くなっている大男を見つけた少女が不審に思い声をかけると、
びくりと肩を震わせ振り向いたその顔には涙が光っていた。
「えっと、誰だい?」
ここは王国騎士の訓練のための場所。
そんな殺伐とした場所に似合わない男装の可憐な少女に、男は慌てて涙を擦りながら聞き返した。
「それはこっちのセリフよ。っていうか、なんで泣いてるの? もう訓練に音をあげた?」
「そうじゃないよ。ただちょっと、落ち込んでいただけだ」
そう言って立ち上がった男は予想以上にでかかった。縦も横も少女の二倍近くありそうだ。
「ふーん。その制服は、あんた正騎士見習いね」
値踏みするような視線に居心地が悪くなり、白地に黄色い縁取りの制服を着た男は身じろぎをする。
「きみはだれ?」
続いた沈黙に堪えきれなくなり、男はもう一度聞いた。
このアカデミーには貴族出身の聖騎士見習いと平民出身の準騎士見習いがいるが、少女の赤地に白い刺繍の服装はどちらとも違ったし、騎士養成アカデミーに入って3ヶ月、この少女の姿を見たことはない。
「そのうちわかるわ」
少女は男の質問にまともに答えず、ビシッと指さすと「でかい体してメソメソしてんじゃないわよ!」と怒鳴りつけて去って行った。




男がその少女の正体を知ったのは数週間後。
「今日の棒術の訓練にはウルリカ姫も参加される。姫はまだ若くておられるが棒術については右に出るものは居ない。
しっかりと学ぶように!」
教官にそう紹介され「ということだからよろしく!」と笑顔で挨拶した金の髪に翡翠の瞳をもつこの国ただひとりの跡継ぎである姫。
それは間違いなく、あの日男に声をかけてきた勝ち気な少女だった。
全員が総当たりで掛かり稽古をする。
見習いは15~20歳と年の幅が広かったが、その誰も姫には適わなかった。
細い腕に細い体と見た目は普通の少女なのにスピードが飛び抜けていて、相手から向けられた攻撃の力の逃がし方を良く
知っている。
そしてとうとう、男が対峙する番が来た。
「久しぶりね」
年相応のいたずらっぽい笑みに、男は緊張する。あの時は知らずに失礼なことを言ってしまった。
不興をかっていたらどうしよう。
「はい、お久しぶりです。あの時は知らず失礼な口を利き、誠に申し訳ありませんでした」
ガチガチに固まって詫びる男にウルリカは少しつまらなそうだ。
「やめてよ。ここでは私も生徒みたいなものなんだから。名前は?」
「ぺ、ペペロンです」
答えると同時に、「開始!」と教官の号令がかかる。
「ペペロン、あんたが泣き虫だからって手加減しないからねっ!」
そう言ってまったく訓練の疲れを見せず、ウルリカは地を蹴った。


「ま、参りました」
地面に倒され、喉仏に棒を突きつけられたペペロンは両手を上げて降参の意を示した。
すぐに「やめ!」との声がかかり他の全員も動きを止める。その一瞬の静寂に、パーンと乾いた音が響いた。
その場に居た全員の視線がペペロンとウルリカに集中する。
「……え?」
なにが起きたのか理解できず、ペペロンは呆然と叩かれた頬を押さえた。見上げるウルリカの顔は怒りで赤く染まっている。
「あんたがしたことは、私にとって最大の屈辱よ」
吐き捨てるように言い、次の相手の前に移動する。
その後も通常通りの訓練が続けられたが、冷たい視線と空気がずっとペペロンから離れなかった。
もともと、ペペロンはアカデミーの中で孤立していた。
聖騎士には貴族しかなれないが、地方の没落貴族の三男坊というだけでも白い目で見られるのに、ペペロンはその体格と素質を見込まれてスカウトされ、特別枠として一年遅れで入ってきたのだ。しかもすでに体力と基礎が出来ているからと飛び級までしている。
入校試験を受け学費を払い、高い志とプライドを持って入って来た他の生徒から良く思われていなかった。
そして、そうした理由で以前から無視されたり仲間外れにされたりと寂しい思いをしてきたペペロンだが、ウルリカとの訓練以降、姫の不興を買った者として余計辛い立場に立っていた。
「お前さ、もうアカデミー辞めろよ」
その日もペペロンは数名の同期生に囲まれて、いかに騎士に向いていないかと延々責められ続けていた。
貴族と言っても名前だけ。気が弱く臆病。すぐに泣く。いつもおどおどしていて騎士の威厳の欠片もない。なりは大きいくせ
にいざ手合わせしてみるとてんで弱い。
何を言われても「うん」「ごめんね」としか言わないペペロンに、同期生たちは余計苛立ちを募らせて言った。
「謝るくらいならとっととここから出ていけ!」
とうとう我慢が出来なくなってひとりが怒鳴ったとき。
「そこのあんたたち、私もそのデカブツに用があるんだけどそのくだらない話まだ続く?」
誰も居ないと思っていた渡り廊下に凛とした声が響く。
「ひ、姫!」
声の主がだれだかわかると、全員が彼女に向かって騎士の礼をとる。
ウルリカは腕を組み、冷めた目でペペロンを囲んでいた候補生たちを見た。
「気に入らない相手を恫喝して追い出す暇あるんなら、その腐った性根を鍛え直す時間に当てたら?」
話をどこから聞かれたのかはわからない。
しかし、これから先、騎士になったときに仕える相手に悪い印象を持たれたのは明らかで、候補生たちは「はっ」と小さく一言だけ答えて逃げるように散って行った。
「まったく。清く正しくの騎士が聞いて呆れるわね!」
キラキラと光る緑の瞳が、散って行った青年たちを睨みつける。
ひとり取り残されてしまったペペロンは、俯いて身を縮こまらせた。
「あ、あの、姫様、ごめんなさい」
訓練で怒らせたのは一昨日のことだ。きっとその用件で来たのだろう。アカデミーを辞めさせられるのでは。
いや、もしかしたらそれだけでは済まずに牢に入れられてしまうのかもしれない。
そんな暗い考えしか浮かばず、ペペロンはとにかく謝った。
「オレ、馬鹿だからどんな失礼をしたのかよくわからないけど、でも姫様を怒らせる気なんて全然なくて。償えるなら何だってします。だから、お願いだよ、ここから出ていけなんて―――!!」
「言うわけないでしょ!」
「え?」
「剣はともかく、棒術で私より強いやつなんてそうそう居ないのに、あんたみたいな貴重な奴に出ていけなんて言うわけな
いじゃない」
「え?」
訳が分からず、ペペロンはもう一度疑問の声をあげた。
あの時、自分はウルリカに負けたはずだ。
「だから聞きたかったの。なんであの時手加減なんてしたの。私が女だから?それとも王位継承者だからご機嫌とりのつもり?」
「そ、そんな!オレ、手加減なんか」
「舐めないで!あんたの動きがまるでなにか制限されたように不自然なのは私にだってわかるわ!」
なにかを恐れるように、攻撃すべきポイントを外し打ってくる。こちらの攻撃をすべてその目で捉えておきながら避けようとしない。
騎士候補生は貴族の中でもエリートの集まりだ。他に気づいている者もいるだろう。そう指摘すると、ペペロンはガックリとうなだれた。
「サライとアンブローズにも同じことを言われたよ」
案の定、他の同期生にもそう言われて怒られたことがあるらしい。
「ならなんで手加減なんかっ!」
「わからないんだ!」
思わず怒鳴りかけたウルリカの言葉を遮って、ペペロンは訴えた。
「オレは、人との戦い方がわからないんだ!」
そう、苦しそうに告白した茶色の瞳から涙が滲んだ。
「ちょ、泣かないでよ! なんか今度は私がいじめてるみたいじゃない!」
ぽろぽろと涙をこぼし始めたペペロンにウルリカは慌ててポケットから取り出したハンカチを渡す。
「それで涙を拭きなさい。 そんで、落ち着いたらどういうことか話して」
ウルリカの渡したレースのハンカチは、ペペロンの大きな手には小さくとも涙を吸い込む役割は果たした。
どうにか泣き止み、しばらくしてから数回深呼吸して、ペペロンは話し始めた。
「オレが住んでたのは国境に近い、森に囲まれた小さな土地で……」
ペペロンの父は男爵で、辺境伯とも呼ばれる一番位の低い貴族だった。
領地のほとんどが森や山で、貴族というより村長と言ったほうが正しいのではないかと思うほどこじんまりした場所に住んでいた。
そこでは皆が農業や牧畜に精を出し平和な時間が流れていたが、ひとつだけ、大きな問題があったのだ。
「それが、木を伐採して開発出来ない理由。オレの住んでる周りの森には、魔物が多かったんだ」
一応他の村や町へ行く道は国の騎士や憲兵が見回りをしていたが、人が足を踏み入れない森はほぼ放置状態だった。
人員には限界があるし、それは仕方の無いことなのだが、実際その場で生活している者からすれば、森から現れる魔物たちの家畜や畑の被害は深刻で、下手をすれば死人も出かねない。
「だから、オレが、その魔物たちを倒していたんだ」
ペペロンは小さいころから人一倍体が大きく力も強かった。
一応貴族の三男ということで畑仕事などにかり出されることはなかったのだが、爵位を継ぐ長男や商才のある次男にくらべて肩身が狭かったため、13才を過ぎてすぐのころに魔物被害から領民を守る自警団に志願した。
「そんな早く!?」
「うん。オレはもうそのころには普通の大人くらい身長あったし」
「どんだけでかいのよ……」
そのせいで鬼子と呼ばれた幼少時の暗い思い出は話さず、ペペロンは続けた。
「確か、170cmくらいかな?」
ちなみに今は余裕で180を超えている。
15歳以上という年齢制限があったにも関わらず、ペペロンは例外的に入団を許可され、それから毎日のように魔物と戦う日々を過ごしてきた。
「あいつらはすごく強くて、当たり前だけど殺さなければ殺される。重傷を負って、戻ってこない仲間も居た」
そんな中でも、最年少のペペロンは生き残った。
父や兄、そして自分たちを慕う領民のために、彼はただ戦った。
そして去年、17歳の春に転機が訪れた。
国境を見回る騎士団が来たときにある牧場が魔物に襲われ、ペペロンたち自警団と一緒に騎士たちも討伐に乗り出したのだ。
「もちろん、俺たちと騎士団が一緒だったからすぐに魔物は倒せて被害はほとんど出なかった。でもその時一緒に戦った騎士のギデオンさんがオレに、正騎士にならないかって」
平民でもなれる準騎士と違って正騎士は出身のほかに厳しい試験とアカデミーの高い学費の問題がある。
ペペロンは体は丈夫だが決して頭は良くなかったし、アカデミーに入って通い続けるほどの資金もなかった。
けれど、メーガンは特別だった。
正騎士の中でも王に認められ、大主教に祝福された者しかなれない聖騎士(ホーリーナイト)だったのだ。
王に認められるにはアカデミーを好成績で卒業した上、それなりの功績をあげなければならない。
「ギデオンなら私も知ってるわ。いつもはお父様の近衛隊にいるもの」
侯爵でもあり聖騎士でもあるメーガンは王の近衛隊に所属し、普段は軍事よりも政治の方に携わるためめったに城を離れない。
そのときはたまたま他に辺境警備に行ける聖騎士がひとりもいなかったので、仕方なく彼が出向いたのだ。
辺境警備の騎士団は聖騎士一人、正騎士二人、五人の準騎士とその他一般兵で構成される。
「それで、家の事情を話して行けないって言ったら自分が推薦するから試験も学費も免除されるって言われた」
しかし自警団の主力であるペペロンがいなくなれば領民が困る。
なのでそれでも断ると、話を聞いていた若い準騎士の一人が、ペペロンがアカデミーに入る間自分がここに残ると名乗りを上げた。
「行きなさい。きみが正騎士になれば城への発言力も増え、ここに常に警備を置くことができるかもしれない。きみが兵たちの指揮を取れるようになるんだ。それにここに居れば僕もきみのように強くなれるかもしれないしね」
そこまで言われて、やっとペペロンは決心をした。
そして今年、無事アカデミーへ入学。
「でも、オレ、馬鹿だから」
一応読み書きは一通り出来たが、勉強はさっぱりだった。
せめて実技ではがんばろうと気合を入れて力試しの試合に挑み、相手を殺しかけた。
刃を潰した模擬剣でなければ、確実にその命を奪っていただろう。
「ずっと殺してきた。だから、殺し方しか知らなかったんだ」
ペペロンの相手をした生徒はあばらと腕の骨を折り、未だ入院中だ。
それからすっかり怖くなり、ペペロンは人と戦うとき、まったく力を出せなくなった。
そのせいでほとんどの生徒があの結果はまぐれだと思っているが、一部の者と教官たちは彼の中でなにが起きたのか気づいている。
「そっか。それで……」
心の問題は本人にしか解決できない。
わかっているからウルリカでもわかる力を抜いた稽古にも教官は何も言わなかったのだろう。
「オレは姫様が言うみたいに強くなんかないよ。本当に強い人は、きっともっと自分をコントロール出来る」
「そうね、そうだわ。あんたは弱すぎる」
「うん……」
がっかりしたようなウルリカのため息に、ペペロンはまた悲しくなってきた。
「よし、わかった! あんたのその弱い心、私が鍛えてあげるわ! ついでに勉強も見てあげる!」
「えええ!?」
いきなり何を言い出すのかと、再び溢れそうになっていた涙もひっこみ、ペペロンは驚いて顔を上げた。
「せっかくそんな恵まれた体格と戦闘スキルもってるのに埋もれさせるのはもったいないもの!」
「そんな、姫様にそんなこと頼めないよ!」
「領民があんたを信じて待ってるんでしょ? なら利用できるものはなんでも利用するくらいの気概でいなさい」
「それにも限度ってものが……」
「うるさい! 私が決めたんだからもうこれ決定!」
問答無用らしい。
元来気の弱いペペロンはそれ以上逆らえず、がっくりと項垂れた。
「あと、その話聞いてやっとわかったわ。あんたのその髪と髭、もしかしてギデオンの真似?」
「うん。ギデオンさんはオレの憧れの人だから」
ずっと気になっていた髭とボサボサの髪の理由がやっとわかった。
「あんな変人に憧れるの、やめといた方がいいわよ」
「えっ? ギデオンさんはすばらしい人だよ!」
「まぁ、いいけどね……」
テオドール・フォン・バルバロッサ・ギデオン侯爵は優秀な指揮官で政治手腕も抜群だが、変人としても有名だ。
(知らないほうがいいこともあるわよね)
城での彼の伝説の数々は、ウルリカの胸の中にしまっておくことにした。
あるま 2010/11/17(Wed)11:44:39 編集
無題
おおお…(´∀`*)やっぱりペペウルは良いですね!自然な感じが良いッ!!
しかもぺペロンの口調…昔っぽく「オレ」って………たまらんです!!!!!

最近毎日のようにここに来るので(ストーカーですみませんwww)
また何か小説が出来たらお載せくださいm(_ _)m
ペペウル万歳! 2010/11/17(Wed)13:55:27 編集
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