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ロゼウル小説を載せてみるテスト。
刻蒼館さんの世界設定を読んで思いついて心のままに書いたものです。
ありがたいことにあちらにも載せていただけるようです。
感謝感激!!
では本編をどうぞ。
『猫日和』
「どうか、平穏無事にアトリエへ帰れますように」
今日はある意味とても危険な任務、クロエへ依頼品の納品の日だった。
万が一のときのためにうりゅはペペロンと一緒に採取に行かせた。そちらのほうがまだ安全だ。
「よし、いくか」
ウルリカは大きくひとつ深呼吸すると、気合を入れてドアを開けた。
「クロエー、依頼の品持ってきたわよ~!」
玄関から大声で報告すると、間もなくクロエが正面の階段を下りてくる。
「……いらしゃい。こっち」
「うん」
この屋敷は小さいころから何度も来ているのでクロエの部屋もわかっている。
先に入っていったクロエを追って部屋に足を踏み入れると、なんともいえない匂いが鼻をついた。
<う……、相変わらず怪しいもんばっかの部屋ね>
彼女曰く「おまじない」のための道具が部屋の棚をすべて埋め尽くしている。
見るたびに増えていっているのは気のせいだろうか。
「……そこ、座ってて。お茶入れるから……」
「あ、待って!はいこれ、マンドラゴラの根とブラッドローズを乾燥させて粉にしたやつ」
品物の入った皮袋を渡すと、言われたソファに腰を下ろす。
「あんたの頼むものっていつもそこはかとなく不吉よね」
「……ありがとう。これで、完成する」
クロエは袋を手にするとそのまま窓際のテーブルへ向かった。
「で、今度はなんの呪いなの?」
「呪いじゃない、おまじない……」
「やられるほうからしたら呪い以外のなんでもないと思うけど」
過去の「おまじない」を思い出して思わず顔をしかめる。
悪気がないところがまたたちが悪いのだ。
「だって、試させてくれるのウルリカだけだから……」
「いやいやいや、試させてるんじゃなくて勝手に試されてるから!」
「……それに、私、友達ウルリカしかいないし……」
「え?」
「これでも、頼りにしてるんだよ……?」
突然のしおらしい言葉にウルリカは戸惑う。
と、同時にクロエがお茶を持ってきた。
ウルリカはそのお茶を受け取ると照れ隠しに一気に飲み干してしまう。
<なにこれ、にがっ>
これまで飲んだことの無い味がする。
「ま、まぁ私もクロエとは付き合い長いし? もう慣れたっていうか、大概のことなら大丈夫っていうか」
「……ねぇ、ウルリカ」
「え、な、なに?」
素直に出られるとどうしていいかわからないため、無駄に混乱してしまう。
「なってみたい動物ってある……?」
「へ?」
なんとか照れていることをごまかそうとしていたウルリカは、クロエの突然の話題転換に拍子抜けした。
「……ある……?」
「え、えっと。猫とか?あんなふうにひなたぼっこしてみたいニャ」
「……」
「ニャ?」
<え? なんで「ニャ」? ってかなんかクロエがでかくなってない?>
話しているうちに目の前にいるクロエがどんどん巨大化していく。
というか、周りの物がすべて大きくなっているのだ。
<ちがう、もしかして私が縮んでる?!>
「……ウルリカは、単純で助かる……」
「ミャ、ミギャー!!!!」(だ、だましたわねー!!!!)
ウルリカが座っていたソファには一匹のかわいらしい茶トラの猫が鎮座していた。
さっき飲んだのはお茶ではなく、まじないの薬品だったのだ。
1時間後。
茶トラ猫になったウルリカは村のはずれをとぼとぼ歩いていた。
<うぅ、どうしよう>
猫ウルリカに向かって「次は……」といいつつなにかをしようとしていたクロエからどうにか逃げ出したは
いいものの、この姿では何もできない。
クロエのまじないは大抵一定時間が過ぎれば元に戻るものが多いので、それに期待するしかないのか。
<まぁでも、猫になって日向ぼっこで寝たいと思ってたのは本当だし、せっかくだからやってみようかな>
常に前向きなのはウルリカの数少ない長所でもある。
<確かこの先に日当たりのいい空き地が……>
「ヴ~~~~」
気を取り直して歩き出すと、後ろからなにやらうなり声がした。
<嫌な予感>
「ワウッバウッ」
「ギニャーー!!」(やっぱり~~!)
振り向くと今の自分の倍以上はある野良犬が、ウルリカに向かって牙をむき出しに駆けてくるところだった。
<こんなことのために猫になったんじゃないいいいいい!!>
というか、もともと本当になりたかったわけでもないのだが。
人の姿のときはともかく、今は明らかにあちらのほうが戦闘能力がありそうだ。
<元に戻ったら絶対クロエに文句いってやる!>
だがとにかく今は逃げるしかない。
慣れない四足でウルリカは必死に駆けたのだった。
その日、ロゼは街のほうへ一人で買出しに出ていた。
街道沿いで乗合馬車を降り、そこからまたひたすら歩いてやっとアトリエのある村につく。
今日も買った物の入った紙袋を抱え、がさがさ鳴らしながら田舎道を進んでいると、どこからか奇声が聞こえた。
<なんだ?>
村へ近づくとその声も鮮明になる。どうやら奇声というよりは動物の鳴き声のようだ。
「ガルルルル」
「シャー!!」
声のするほうへ行ってみると、村はずれの柵に囲まれた空き地で猫と犬が喧嘩をしていた。
<珍しいな>
猫は大抵木に登るか壁を乗り越えるか、身軽さを利用して逃げるのでこんな風に犬とまともに喧嘩しているのを見たことが無い。
<よっぽどとろかったのか?>
だが、何度もすばやく繰り出している猫パンチを見る限り結構俊敏そうだ。どちらかというと間が抜けていて逃げ損ねた方かもしれない。
<やっぱり体格の差は大きいな>
一生懸命応戦しているものの、猫のほうがだいぶ劣勢らしい。
と、ロゼの見ている目の前で犬が思い切り猫の前足に噛み付いた。
「ミャウッ!!」
「おいっ!」
考える前に反射的に体が動く。
「ギャンッ」
気がつくとロゼは荷物を放り出して猫と犬の間に入り、抜いた剣の平で犬をはたいて追い払っていた。
「大丈夫か?」
キャンキャンと鳴きながら逃げていく犬は放って、咬まれた猫を振り返ると、茶トラの猫は丸まって痛そうに足の傷をなめていた。
深く牙が入ったらしく血が地面に垂れるほど出ている。
「おい」
ロゼはしゃがむと繰り返し傷を舐める猫を覗き込む。
「ミャッ?!」
ちらりと視線を上げた茶トラは、今初めてロゼの存在に気づいたように驚くと、とたんに逃げようとした。
「待て」
だが、はっしと後ろ足を掴まれ無様にべちゃっとつぶれる。
「ニャッ! ミャッ!」
必死に逃げようとする茶トラを両手で掴み持ち上げ傷口をよく見るとまだ血は止まっておらず、じわしわとにじんで毛を赤く染めている。
「結構ひどいな……」
「ニャウ! ニャニャ!」
まだあきらめず足をばたつかせる猫を無視してロゼはそのまま歩き出した。
「ミャー!」
「うるさい。手当てしてやるから少しおとなしくしてろ」
アトリエの自分の棚には、だれかさんが調合に失敗して爆発させたとき用の救急セットが入っている。
「そういえば……」
猫のくせに簡単に追い詰められる間抜けなところといい、犬に喧嘩しかける無謀なところといいちょっと似てるかもしれない。
「ふっ……」
思い出し笑いをするロゼを、やっと暴れるのをやめた猫は不思議そうに見ていた。
<一生の不覚!!!>
野良犬にあっという間に追いつかれ、覚悟を決めて挑んでみたものの惨敗したウルリカは、今、ロゼの手によってアトリエに戻って来ていた。
<まさか、こいつに助けられるなんて!>
犬に手を咬まれたとき、一瞬で目の前に人が現れ追い払ってくれた。
ほっと安心し、とりあえず傷口がめちゃくちゃ痛かったので舐めながら、その人間を見上げたら、なんとロゼだったのだ。
<なんであんなところにいたのよ。まぁ、確かに助かったけど>
それにしても猫の姿を見られてしまうなんて……。
「ちょっとここにいろ」
ロゼは二階の寝室に上がり、猫姿のウルリカをベッドの上に乗せると、自分の私物の入った棚をあけた。
<うーん、でもまだバレてないはずだし。ここはおとなしく猫のふりして治療してもらってから逃げれば……>
ぶっちゃけ犬に咬まれた傷は相当痛かった。
このまま放っておいたら化膿してしまう危険だってある。治療してくれるというならしてもらったほうがいいに決まっている。
<人間の姿だったら絶対負けないのに!! もっといっぱい引っかいてやればよかった!>
実際、ウルリカが負った怪我はこの咬み傷だけだが、追い払われた犬のほうはロゼが気づかなかっただけで無数の爪あとがついていたはずだ。
手数はウルリカのほうが多かったのである。
「よし、おとなしくしてろよ」
ウルリカが怒りに燃えているうちに薬箱を用意していたロゼは、ベッドに腰を下ろし怪我をしている前足を手にとった。
「人間用の薬だが、無いよりはマシだろ」
傷口にまず消毒液が吹きかけられ、次に軟膏が塗られる。
<うぅ、しみる>
思わずうなり声が漏れた。
「ひっかくなよ」
なるべく痛くないようにと、優しくしてくれているのがわかる。
そして今度は丁寧に包帯が巻かれた。
「これでいいだろう。もう、でかい犬に喧嘩売るなんて馬鹿するんじゃないぞ」
<別に、私から売ったわけじゃ……>
抗議の鳴き声を上げようとしたとき、不意にロゼがふわりと笑った。
「お前みたいに間抜けな猫もいるんだな」
言葉とは裏腹に、皮肉もなにも入ってない、自然な笑顔。
<なっ、なによ、そんな顔も出来るんじゃない>
私にはいつもしかめっ面ばっかりなのに。
<動物には優しいのね>
意外な一面を見た。
ロゼといえばいつも怒っているか不機嫌か呆れてるか無表情かで、考えてみればいつも喧嘩口調であまりまともに会話したこともないかもしれない。
<大体いつも人のことを馬鹿にしたようなことばっかり言うからいけないのよ。猫相手に普通にしゃべるならまず私に…>
「っにゃ、うにゃにゃにゃ!!」(って何でもない、なんでもないから!)
聞こえているわけもないのに、前足をばたつかせ思わず自分で否定する。
相手の機嫌を損ねるようなことを先に言うのはほぼ毎回ウルリカの方なのだが、もちろん本人にその自覚はなかった。
「なんか、変なやつだな」
こんな挙動不審な猫は見たことがない。
なにを伝えたいのか、ロゼは一人で伏せたり立ち上がったりを繰り返す猫を抱き上げ、まじまじと見た。
「お前の目、緑色か」
じっと見つめられて、ウルリカは更に頭に血がのぼっていくのがわかった。。
わかっている、ロゼは自分ではない、拾った猫を相手に見ているだけ。それでもこんな間近で顔を見るとドキドキしてしまう。
「俺の、一番好きな瞳の色だ」
<んなっ>
そして再び頭をなでながら微笑まれると、ウルリカは文字通り飛び上がりそうになった。
ただでさえその視線に体がかゆくなるような熱くなるような妙な感覚を覚えて落ち着かないところへ、そんなことを言われてはたまったものではない。
「んニ”ャー!!」
「あ、おい!」
全身の筋肉をフルに使ってロゼの腕の中から飛び出すと、ウルリカは開けてあった窓からそのまま一目散にアトリエの外へ逃げ出したのだった。
「……おかえり……」
屋敷に戻り、扉をがりがり引っかいているとすぐにクロエが出てきて部屋に連れて行かれた。
「ニャー! ニャンニャニャニャニャーニャ!!」(ちょっと!これどうやったら元に戻るのよ!!)
「うん、何言ってるのかまったくわからない……」
ウルリカは猫語でまくし立てるがクロエにあっさり否定される。
<クロエならもしかしてと思ったんだけど、ダメか>
自分からしたらぷにぷに言うだけのぷにぷに語も同じようなものなのにと、がっかりする。
「……まあ、大体想像はつくけど……」
「にゃっ?!」
「たぶん……、そろそろだと思う……」
「ニャウ! ニャニャンッニャニャういうこと……って」
「……時間ぴったり……」
「戻ったあああああああああああ!!!」
手、足、体を見て確認するが、全部元に戻っている。
「……チッ」
「あ、あんた今舌打ちしなかった?」
「……してないよ?」
「相変わらず黒いわね」
だがとりあえず、無事戻れたのだから良しとしよう。
そのこだわらなさが何度もクロエの実験体にされる一番の理由なのだが、もちろん本人は気づいていない。
「……あ、ウルリカ、腕……」
「え?」
指摘されて見てみると、猫のときにロゼが巻いてくれた包帯がほどけていた。
「怪我、してたっけ……?」
「ん、いや、まぁ、ちょっとね! クロエ、包帯ある?」
猫サイズのときはちょうど良かった包帯も、人に戻れば短くなってしまい、傷をカバーしきるには少し足りない。
無言で差し出された真新しい包帯を礼を言って受け取ると、ウルリカは不器用ながらもなんとか自分で巻きなおした。
「……ねぇ、ウルリカ。それって」
「じゃ、じゃあ元に戻れたことだしもう帰るわね! 今日は疲れたし報酬もまた今度でいいから!」
これ以上突っ込まれる前にと早口でまくし立て、クロエの返事も待たずに部屋を出る。
<なんか今日は逃げてばっかだわ……>
心からつかれきったウルリカは、早く寝て忘れてしまおうと家路を急ぐ。
「効果時間に改良の余地あり……」
脱兎のごとく逃げ出した後姿を見送ったあと、クロエはおまじないの本に注意書きを足していた。
「ただいま~~~」
ぐったりしたウルリカがアトリエに帰ると、すでにペペロンとうりゅも採取から戻って来ていた。
「う、おかえりなさい」
「おかえり、おねーさん」
二人に出迎えられ、ほっと息をつく。
なんだかやっといつもの日常に戻れた気がする。
「おねーさん、採ってきた材料はどうするんだい?」
ペペロンが普通の人間なら持ちきれないほどの大きさの袋を持ち上げどすんと中央のテーブルに置くが、ウルリカはろくに目もくれず手を振った。
「あー、今日はもう疲れたから選別も調合も明日からにする」
「うー?」
うりゅがふよふよと、肩を落として歩くウルリカに近づくと心配そうに顔を覗き込んだ。
「うりゅりか、だいじょうぶ?」
「ありがとう、うりゅ。あーもう、あんたはなんてかわいくていいこなの!!」
目の前に飛んできたうりゅをがっしと掴むと思い切りぎゅっと抱き、頬ずりする。
「うー! くるしい」
「癒されるわ~~~~」
小さなマナの抗議をものともせず思う存分ふわふわの感触を味わう。
「あれ? おねーさんその腕…」
「なんだ、帰ってたのか」
突然ふってきた声に、親ばかを全快にしていたウルリカは大きく心臓を鳴らした。
見るとちょうどロゼが2階から階段を降りて来たところだった。
「う、うん。さっき、帰ってきたところ」
顔を見るとどうしてもあの笑顔を思い出してしまう。
「じゃー、私寝るから!あ、夕飯もいらないから起こさないでね!」
「夕飯いらないなんて、おねーさんどうしたんだい?! 頭の病気でも……」
すかさずつっこみを入れたペペロンを無視して、うりゅを抱いたままウルリカはロゼの横をすり抜けるように二階へ駆け上がった。
<ん?>
「はっはっは、おいらのことは華麗にスルーだね」
「なぁ、あいつ、腕に包帯巻いてなかったか?」
「え?うん。朝はなかったよね。黒いおねーさんのところでなにかあったのかなぁ?」
「ふーん……」
下でそんなやりとりがされていると思っていないウルリカは、ベッドに倒れ込むと思った以上に疲れていたのか、本当にすぐ寝入ってしまった。
「うー!うー!」
そしてその腕の中では、うりゅがどうにか脱出しようと一生懸命もがいていたのであった。
終わり
☆ということで、いつもは見せないロゼの笑顔のギャップと「緑の瞳」を書きたかっただけという・・・w
ロゼの青い瞳とウルリカの緑の瞳って対照的でいいですよね。髪の色も!
ロゼはクールな色でウルリカは明るく暖かみのある色というか。
この二人は萌え要素がたっぷりで大好きです♪