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ひさびさに王麦サイト巡りしたらほとんど消えていました。
やっぱ燃料無いと続かないよね;;
とりあえず昨日予告した王麦で着たのでUPします。
『世界を見たいと思ったことはなかった。
確かに不便ではあったけれど自分にはそれが当たり前だったし、それに見えるものが綺麗なものだけで
はないことを知っていたから。
でも今は…。
「夢を見るようになりますた」
もう数え切れないほどの局を打ち、慣れた今では対局中に多少の雑談をするようになっていた。
「夢?」
視線は盤上に向けたまま王が聞き返す。
「はい、夢の中でも総帥様と軍儀を打っていますた」
少し間をおいてパチンと碁を打つ音とともに置き石を読み上げる王の声。
(お優しい声)
コムギはこの声を聞くのが好きだ。
そして思う、王のお姿を見てみたい。
「そこでは盤や碁石もはっきり見えるのですが、向い側に座る総帥様のお姿だけはぼやけてすまってい
るのです」
パチン。
話しながらコムギは次の手を打つ。
「そうか」
王の反応は静かだった。
なにを期待してこの話を始めたのだろう。
自分でも不思議に思いながら言葉を続ける。
「それでもときどき、ぼやけている輪郭が形をとろうとするのですがやはり、だめなのです」
募る想いが見せる夢なのだろうか。
最初は一緒に軍儀を打てるだけで幸せだった。
次はその声を聞けることに、名を呼ばれることに、手を取ってもらえたことに。
疑問も欲も、一つ持てば際限なく増える。
気がつけばいろんなことを欲していた。
お姿を見たい、でもこの目は光を映さない。
だから、触って確かめたいなどと。
(言えるわけはないのに…)
王ならばもしかしたら頼めば許してくれるかもしれない。
優しさに甘えそうになる自分に戸惑う。
こんな気持ちは初めてだった。
(いけない、総帥様は本当に雲の上の存在のお方なんだから)
「無駄話を、いたすますた」
コムギはそう言うと、駒を読む以外の口を閉じた。
その後しばらく静かに対局が進む。
「余を見たいのか?」
突然の言葉にコムギは驚いて碁を打つ手を止めた。
「へ?あの…そそそそれは」
自分が切り出した馬鹿な話はもうすっかり終わっていたと思っていたので頭が回らずどもってしまう。
「わ、わダスは目が見えないので…」
「それはわかっている」
「はいっ」
王は始めて視線をコムギに移し、聞いた。
「見えないのは生まれつきか?」
「はい、そうです」
「ではなぜ夢とはいえ、盤や石がわかる」
「もう長い間触っているからだと思います」
見えずとも感触や匂い、ほかにも人から聞き得た情報などで形を捉えることができる。特に軍儀はもう
十年以上の付き合いでさんざん接してきた。物は見えずともその様は実際見たかのように頭の中に思い
描くことが出来るようになっていた。
コムギがそう説明すると王はもう一度「そうか」とつぶやいた。
淡い期待が胸に浮かぶ。
「あの、総帥様…」
「見えぬほうがいいこともある」
硬い表情で王は言ったが盲目のコムギにはもちろんわからない。
(やはり恐れ多い願いだったんだ)
じわりとこみ上げる悲しみを堪え、ただこれだけは知ってほしいと口を開いた。
「わダスもそう思います。だからこれまで目が見えぬ不自由を気にすたことはありませんですた。でも、
きっと総帥様の居られる景色ならどんな場所でも美すく見えると思うのです」
たとえ草一本生えぬ赤土の荒野であろうとも、王さえ居ればそこはコムギにとって楽園となる。
他人が聞けばそれは愛の告白にも等しかったが、当の本人たちにはその言葉以上の意味を持たなかった。
「…其方の番だ」
王は返事の変わりに対局を促す。
見ないほうがいいもの。
王自身の姿が人間から見れば異形であることをさしていることを知らないコムギは切ない思いを忘れるた
め、その後は軍儀に没頭するのだった。』
中途半端かも?
王サイドも書いて完全かな。
でもコムギなら王様がどんな姿でも関係なく受け入れると思いますv
あと、2作ほど王ムギssをUPし忘れてたのでNOVELに追加しときました^^;